千ヶ崎杏子は毎日充実した日々を過ごしていた。
妻を労わりつつ仕事も順調にこなす旦那『忠志』と、優しく朗らかに成長した最愛の息子『悠迩』に囲まれての何不自由ない生活、ささやかだがそんな毎日に十分満足もしていた。
しかし、そんな杏子にも不満が全く無い訳ではなかった。それは何処か淡白な忠志との夜の営み、それともう一つ……
自分自身も忘れていた過去の過ち。杏子が抱えていた誰にもいえない『秘密』……だが、そんな過ちが『彼』との出会いをもたらしてしまう……。

ある日、悠迩が珍しく家に連れてきた友人……息子の悠迩とはまったく違う大人びた容姿と礼儀正しさを持ち、誰からも好青年と見られるであろう『黒田智也』
しかし、杏子はそんな智也に好印象を持ちながらも何処か冷たい……言い知れない予感のようなモノも感じてしまう。そしてその予感は後に現実のモノとして杏子に襲い掛かる事になる。

ほころびを生じ始める幸せな生活。満たされない想い、家族への体裁。様々な抑圧に身を震わせながら、ひとたび崩れ始めた壁は徐々に大きな歪を生み出し杏子を飲み込んでいく……
目の前に大きく開いた『禁忌』と言う名の道へ……

 
 
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